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部員日記

中田歩夢:優終の美(あと36日)

伊藤大志から引き継ぎました。長距離ブロック且つトレーナーブロック4年の中田歩夢です。

 大志から日記が回ってくるのはおそらく4年間で初めてです。陸上人生の最後の最後に、同世代のスターから日記を回されるのは心底嬉しく、箱根駅伝を夢見た小学生の私からは考えられなかったと思います。今でこそ他の同期と同等かそれ以上に私に口撃(友好的な)をしてくれるようになった大志ですが、入部してから最初の箱根が終わるまではほとんど1対1で話すことはなかったです。というのも当時は高校歴代2位(当時)の記録を引っ提げて入学し1年目から三大駅伝フル回転だった大志に私はどこか近づき難い、話すのも恐れ多い印象を抱いていたからです。ただ年が明けて学年が上がると、大志は学年リーダーとして積極的に話しかけてくれました。その時は純粋に嬉しく自分も実力関係なく仲間と認めてもらっているのだと思えました。そんな大志が主将となって作り上げてきたチームもあと1ヶ月強で終わりを告げます。近年駅伝主将を務められた方と比較しても、大志は本当に多くの時間をチーム全体のために費やしてくれたと思いますし結果4年間で一番結束力のあるチームになっていると思います。ただ、ここから先はチームのことは我々スタッフに任せ、最後の大学駅伝に向け自分のことだけ(とはいかないかもしれないけど)に集中してもらえればと思います。私の目標は「選手1人1人が自分の目標を達成すること」です。大志が個人の目標も、大志がチームとして叶えたい目標も達成できるよう最後までサポートしていきます。


おそらく最後の部員日記になるということなので「過去への感謝」「未来への想い」「後輩へのアドバイス」この3つの構成にしようと思います。長くなるとは思いますが、どうか最後までお付き合いください。


まず、「過去の振り返りと感謝」です。
私は小学校5年生に箱根駅伝で柏原竜二さん(当時東洋大学)の走りを見て、将来箱根駅伝を走りたいと思いました。ただ、当時からなぜか応援していましたのは早稲田大学でした。小学校では野球をしていましたが、中学では迷いに迷った結果陸上部を選びました。小学校でバッテリーを組んでおり、「中学でも一緒にバッテリーを組もう」と言っていた同級生には今でも申し訳ない気持ちがあります。
中学の陸上部では記録を出す楽しさと同時に、練習以外(食事など)の生活、自分以外の人に目を配ること、当たり前の重要性を教わりました。顧問の先生は今でもお会いすることがありますが、あの頃の指導があったからこそ今色んな人から慕ってもらっていると思います。
高校では陸上の苦しさを知りました。中学からほとんど記録が伸びず、何度もやめようと思いました。ただ、部活の雰囲気が好きだったことで最後まで続けられ、大学でも競技を続ける選択ができました。あの部活の雰囲気を作ってくれた同期や先輩後輩、顧問の先生には心から感謝しています。
そして大学では夢の厳しさと、自分の本当の良さや喜びの源泉を知りました。とても通用するレベルではなかったものの、もしかしたらと思い選手として入部しましたが現実は甘くなく2年生の12月に小学校5年生で抱いた箱根駅伝への夢は絶たれました。ただその後なんとなく選んだトレーナーという道で、「自分が携わった誰かの笑顔を見ること」に大きな喜びを感じることに気づきました。また、同時に「抽象的な物事をじっくりと論理的に分解して考えていくことが得意」だということも知りました。その喜びの源や強みが将来の進路を選択する際の軸にもなりました。


また、とにかく両親には感謝してもしきれないくらい感謝の気持ちでいっぱいです。母親は貧血や疲労回復のために徹底的に栄養価の高い料理を朝早くから作ってくれました。にも関わらず自分の競技で結果が出ずに当たってしまったこともありましたが、怒りながらも丁寧に話を聞くことで頭の中を整理でき次に進んでいくことができました。父親にも同様に弱音ばかり吐いてきましたが、冷静に話を聞き諭してくれました。雨の日には仕事があるにも関わらず朝練習の送迎までしてもらい、本当に頭が上がりません。今後はしっかりと恩返ししていこうと思います。また、あと1ヶ月だけ苦労をかけますがよろしくお願いします。


結果として陸上生活10年間で夢は叶えられませんでした。それ自体はいまだに後悔すること、悔しいと思うことがあります。ただそれ以上に、人として大きく成長することができ、この経験をしていなければ気づかなかったであろうことや視点にもたくさん気づくことができたという点で大きな価値のある10年間でした。


続いて、短くはなりますが「未来への想い」です。
 過去の振り返りの終盤に書いたように、私の喜びの源泉は「自分が携わった誰かの笑顔を見ること」でありそれが得られるような将来を選択しました。一方これまで、私自身が多くの人に支えられ楽しい時も辛い時も笑顔にしてもらいました。今後はその分、世界中の人たちに笑顔になってもらえるように自分の強みを活かして頑張っていこうと思います。


そして「後輩へのアドバイス」です。
私から後輩に伝えたいアドバイスは2つです。1つ目は「自分が思っている以上に色々なことにチャレンジした方がいい」ということです。私自身、正直入部直後から最近までは他の大学生よりも絶対に自分の方が充実した経験をしていると思っていました。それが故に外に目を向けたり外部から話を聞くことをせず、ただ陸上競技だけをして、ただ目の前にあるやらなければやらないことだけをしていました。もちろん、それも一つの道ではあると思いますが今年から就職活動などで初めて会う社会人や同学年の大学生、地元の友人から彼らがしてきた色々な経験の話を聞きました。同じ年代で起業したり、専門学校を出てすでに働いていたり、アルバイトで稼いだお金で1ヶ月ひとりでヨーロッパを回っていたり、私は到底想像できないような話を聞きました。その時私は、自分が本当に狭い視野、世界でしか生きてこなかったことを痛感し、後悔しました。そこからは今まで自分がしてこなかったような様々なチャレンジをしました。早慶戦のSNS担当に立候補し他部活を巻き込んだPR活動をしてみたり、他のトレーナーの朝練習参加制度を作ったりと時間も労力もかかりましたが、思っていた以上の充実さを感じました。また、そのチャレンジの中で外部との調整の難しさ、周りに協力してもらえるように説得することの大変さ、さらには社会人マナーまで色々なことを感じ自分が成長していると感じることができました。ただ、どのように挑戦できることを見つければいいのかわからないという部員もいると思います。そのような部員におすすめなのは、批判的にまたはある意味クレーマーのような視点を持ってみることと、思いついたことはやってみることです。チャレンジをする前の私は、誰かがルールを破っていたり仕組みとして回っていない制度があっても「まあ大丈夫っしょ」と思い見過ごしてきました。ただ、私が見過ごしてきた悪い状況やうまくいっていない状況を改善することに経験のチャンスがあります。そしてそのチャンスは一度見過ごしたらなかなか掴めないものです。さらに、部活以外の友人や知り合いと定期的にコミュニケーションをとることもおすすめします。それにより自分と同質、同じような経験をしてきた人とのコミュニケーションだけでは得られない視点を得られるでしょう。とにかく、狭い世界にとらわれず外部に目を向けながら色々なチャレンジをしてみてください。学生主体の競走部にはそのチャンスがたくさん広がっており、きっとそれは自分の競技にも生きてくるはずです。


2つ目は「定期的に自分を褒めてあげてほしい」ということです。1つ目と矛盾するかもしれませんが、選手、スタッフ関係なく確実に他の大学生よりも遥かに厳しい生活をしており、並大抵の大学生では絶対に続けられない生活をしています。選手については他の大学生が朝まで飲み会をする中、競技のために栄養に気をつけて食事を摂り食べたいものも我慢し、早く寝て翌朝も早く起きて朝練をし遅くまで練習をする。もちろん競技力向上のためには必要なことではあるのですが、他の大学生からすると考えられないほどすごい努力だと思います。競技を辞めた今考えると、あの生活に戻るのは考えられません。だから、それだけやっていても結果が出ずに悩み、落ち込むことがあるかもしれませんがそんな時は「自分はものすごいことをしているんだ」と自信を持って、さらにそんな自分を褒めてください。気楽になって視野が広がり、解決策が案外簡単に見つかるかもしれません。スタッフについても平日週6日、早くから来て遅くまで選手をサポートし自宅でも選手のための業務を行う。そんな風に自分以外の誰かのために大半の時間、体力を費やすことは誰にでもできることではありません。もし業務をミスしてしまった時も反省はしつつ、「自分はものすごいことをしてるんだ」と自信を持ち自分自身を褒めてあげてください。ただ、スタッフに注意してほしいのは部全体を見れる立場だからといって、「選手より偉いというわけでは決してない」ということです。どうしても業務の際に選手のタイム、結果を見てそれをコーチ陣と話す機会が出てきたり選手に物を提供したりすると上から目線になってしまう、もしくはそういう風に見られてしまうことがあると思います。実際に私自身もそのような経験がありました。しかし、それではせっかく自分たちが選手のためにやっているのに彼らとの信頼関係が崩れてしまいます。常に選手の気持ちになって選手が何をしてほしいのか、選手が自分たちのことをどう見ているか考えれば選手と最高の関係を築けると思います。また、それは働く際にもお客様の気持ちを考えることにつながるのではないでしょうか。


長くなりましたが、後輩にはとにかく気楽に積極的に色々なことにチャレンジをしてほしいと思います。怒られるかもしれませんが、仮にミスをしてもなんとかなりますし、大きなミスをしてもしっかりと心を込めて謝れば大人がなんとかしてくれます。気楽に、でも意欲的に色々なことにチャレンジしてください。


文章的にはすぐ卒業しそうですが、私には集大成となる箱根駅伝が残っています。
正直、選手を引退しないといけないことが決まった時、部に残ろうと思ったのは自分のためももちろんありますが、それ以上に同期や後輩、先輩といる時間が楽しかったからです。今年も辛い時もありましたが、チームメイトといる時間を手放したくないという思いが勝り、ここまで来られました。特に長距離の同期についてはおそらくどの代よりも真面目で練習熱心でチームのことを考えており心の底から尊敬します。最後まで彼らの目標達成をサポートし、自分の目標を叶えられるよう日々過ごしていきます。また、大志の紹介にもありましたが私はトレーナーブロックでもあります。特殊な立場な上に色々と注文の多い私を許し、慕ってくれた?後輩たちのためにもそちらのブロックでも後輩が来年以降より良い活動ができるように残りの期間活動していきます。私にとってはトレーナーも長距離もどちらもメインの居場所であり(兼)という言葉は使いません。長距離ブロックかつトレーナーブロックの中田歩夢としてどちらも100%自分のやることを全うして卒業します。


さて、明日はハードルブロック1年の野村にお願いしました。彼女は私のファンだということで、数ヶ月前から日記を回してほしいとせがんできていたのでこのタイミングでお願いしました。そんな彼女は今年の関東インカレに1年生から出場した実力者です。ただ、シーズン全体的には、故障があったこともありなかなか苦しい時期が続いていたように思います。それでもシーズン終盤の関東新人2位の結果は、来季の活躍を予感させてくれました。冬季練習に入っても最後の方まで残ってトレーニングをする姿が印象的です。その信じられないくらいのピュアさでパンクしない程度に色々なことを吸収し、実力者揃いの同期と切磋琢磨しながらこれからの早稲田のハードルブロックを代表する存在になってほしいと思います。せっかく部員日記を回してあげたのでそれ相応のお返しは期待しています。


大変長くなってしまいましたが最後までお付き合いいただき大変ありがとうございました。残り36日、選手にそして周りの人に優しく寄り添い、そしてその結果自分にとってもチームにとっても最優の終わり方で陸上生活10年間を完走できるように1日1日を過ごして参ります。


また、1月2日、3日の箱根駅伝は早稲田大学競走部の応援をよろしくお願いいたします。


ここ最近急激に冷え込んでいますので、どうかご自愛ください。それでは失礼いたします。